パワーあんどん 誕生と発展の歴史

誕生前夜

パワーあんどん」の原型が生まれたのは2012年春。

グループ会社の自動車部品工場 (株式会社渡辺製作所 ) の生産管理システムの構築が1つの区切りを迎え、次の重要な課題を見つけ、そこに向かって動き出そうと考えていました。

リーマンショック、東北地方太平洋沖地震と立て続けに工場を襲った困難にもなんとか持ちこたえ、中国の大連に進出すべく現地法人 (大連能倍金属加工有限公司) 設立の準備を進め、渡辺製作所は tier1 (一次請け) の工場としてふさわしい組織に脱皮しようと大きな構造改革を進めていました。

時を同じくして、自動車部品業界では真のグローバル化が進み、これまで日本の自動車部品工場は高品質を武器に部品の価格を維持していましたが、中国やタイの品質向上により、同じ土俵で価格で比較されるようになりました。

このような時代背景から、これから工場が世界で勝負して生き残るためにはどうしたら良いかと真剣に考えました。

その時に気付いて驚愕したのが、見えている・分かっていると思っていた工場の現場の状況がまるで暗闇にいるかの如く、正確な情報が一切わからなかったのです。

毎日稼働している目の前の設備が日々どれだけ稼働して、どれだけとまっているのか正確にわかる人が誰もいなかったのです。

工場の真実を知りたい

工場の真実を知り、現在の実力を知ることで正確な原価がわかり、継続的なカイゼン活動ができるようになるだろうと確信しました。

問題はいかにして、その情報を得るか?  
そして、それは手間をかけずに、正確でなければなりません。
またリアルタイム性も重要であると考えました。

以前から実施していた「紙の日報」は何の役にも立たないことはこの時点ですでに気づいておりました。

紙の日報は、現場で手間がかかり、集計にも膨大な手間がかかるくせに、日報の情報が不正確であるために集計結果も何の参考になもなっていなかったのです。

パワーあんどん 1号機 誕生 (コードネーム : EXG-CA01) (2012年春)

問題解決のために考案したのが、一台の設備に一台取り付ける自動日報装置でした。

以前よりバーコードを利用した作業指示書をハンディーターミナルで作業開始と終了時に読み込んで工程管理するシステムを他の工場に多数納品していましたこともあり、そのメリットとそれだけでは補えない課題について熟知していました。

単純にまとめると、

メリットは、バーコード読込にすることで、手入力する手間が省けるということ。

補えない課題とは、バーコードで開始と終了はわかってもその間に何が起こっているかがわからないこと。

この課題を長い間埋めることができなかったのですが、スマートフォンやタブレットの普及で端末が安くなり、社内ネットワークも安価に構築できるようになってきていました。

そこで、試作したのが記念すべき パワーあんどん 1号機です。

安価な中華タブレットと物理キーボード、ステータス変更ボタンを組み合わせて、キーやステータスボタン押下をタブレットに伝える基板の開発を行いました。

この時点でやりたいことはある程度明確でしたので、現在のパワーあんどんの原型はすでに出来上がっています。

古い設備も負けない堂々とした昭和感漂う風貌。

機能としては目的をある程度クリアしたものの、製作に要する手間とコストが大きすぎました。

パワーあんどん 2号機 (コードネーム : EXG-CA02) (2012後半)

製造の手間の軽減とコストダウンを図るために、テンキーパッドをタブレットの画面内にデザイン。

パワーあんどん 3号機 (コードネーム : EXG-CA03) (2013年)

物理ボタンを廃止、市販のAndroid タブレットの OSに改造を加え、充電と同時にUSB機器を利用できるようにしました。

タブレットの後ろに設備信号をUSBを介してタブレットに伝える基板を開発してボックスに収めました。

極小サイズのバーコードリーダーを採用。

これにより、制作の手間も大幅に軽減したため50台程度量産。

ただしいくつかの課題も発生しました。

その1つは、Android タブレットがUSB機器を常時接続して利用するような想定ではなかったため、開発した基板への電力供給が若干弱く、基板の動作が不安定になってしまうことがありました。

パワーあんどん 4号機 (2017年)

当時の安価なAndroid タブレットは、前述のようにUSB機器への電力供給がままならないこともあり、比較すると高価な Windowsタブレットを採用することにしました。

ここである程度の完成形に近づいたため、自社工場で磨いた仕組みを他社に向けて一般提供することにしました。

写真は 2017年の Japan IT Week 出展時の様子です。

この時点では、参考出品。

この頃、自社工場に導入済みの 3号機 に異変が起こり始めました。

バッテリーが膨張し、タブレット本体が開いてしまうケースが続出。ガムテープでカバーをとめて、しばらく使うことになりました。

そして、しばらくして、この Windows タブレットもバッテリーが膨張し始め、カバーが開いてしまうという現象が発生し始めました。

ちなみにこのタブレットは、バッテリー無しのモデルが発売されていましたので、おそらくは同じ問題が多発したのだと思います。

この経験から、一般のタブレットは 24時間電源供給して利用するのことを想定していないと判断。以後は市販のタブレットを採用することをやめました。

パワーあんどん 5号機 (2018)

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このバージョンでは、これまでのノウハウをもって、独自のタブレットを作成することにしました。

2016年から実験を重ねていた 3Dプリンタを使って、タブレット本体を3Dプリンタで出力することにしました。

マザーボードには LattePanda を採用。 Windows + Arduino という構成が まさに IoT向けと判断。

Arduinoへのつなぎこみを行うための端子台も開発。チャタリングを防止するための回路も実装。

 

パワーあんどん 6号機 (2018)

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画面に 10インチのタッチパネルを採用。

センサー情報を入力する端子台も バージョンアップ。

パワーあんどん 7号機 (2019前半)

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高性能なタッチパネルを採用。水濡れ、手袋でも操作可能なタッチパネル。電源内蔵。端子台をバージョンアップ。冷却ファン、USBポートx2 

本体も前面、背面を金属パネルにして強度をアップ。

 

パワーあんどん 8号機 (2019後半)

「パワーあんどん」が模索していたのは、シンプル、安価、堅牢性。

7号機まで本体内に色々な機能を追加してきましたが、そのことにより、価格を抑えることが困難になってしまっていました。

またセンサー情報の取り込みを多数できるようにしてきましたが、実際の運用では設備の生産信号のみの事も多く、それ以外も温度監視や振動、圧力程度でそれほど多くのセンサー情報を必要としているお客様がほとんどいないという事実がありました。

このようなことから、原点に立ち返り、シンプルでかつ工場向けに最適化した独自のタブレットにしました。

このモデルから量産できるようにして、価格を大幅に抑えることが可能になりました。